Release Date 2023.06.29

4.絹セリシンとは

 従来、セリシンは利用されずに捨てられていた絹のもう一つの新しい成分であり、人のお肌をみずみずしくしっとりと保つ保湿作用と、外部の刺激からお肌をガードする保護作用にとても優れています。丹後織物工業組合では丹後ちりめんから直接的に水のみでセリシンを抽出し、得られたセリシンを「絹セリシン」と名付けて、スキンケア化粧品「きぬもよふ」と「まゆのお風呂」をはじめとするボディケア製品に配合し販売しています。

 

<セリシンってなに?>

繭の糸は2本のフィブロインと、その周囲を取り囲んで1本の繭糸に束ねている糊状のたんぱく質のセリシンとで構成されています。繭はその中で蚕が蛹(さなぎ)となりさらには蛾(が)となっていく間のシェルターであり、セリシンは繭の中の湿度コントロールをすると同時に、紫外線など外からの刺激や外敵から蛹を守り、住みかを安全かつ快適に保つ働きをしているのです。


図.1 繭糸の断面図

<セリシンとフィブロインの違い>

 セリシンは繊維質であるフィブロインと比較して分解されやすくまた水にも溶けやすい点が大きな違いであり、そもそも絹織物の精練加工はこの性質の違いを利用して行っているのです。

表.1 フィブロインとセリシンの比較
 この違いの根本はたんぱく質を構成するアミノ酸の組成が大きく異なるためです。即ち、フィブロインは側鎖の小さい無極性アミノ酸が多いため結晶性が高く分解されにくく水には溶けません。一方、セリシンは側鎖にイオン化しやすく大きな分子を持つ極性アミノ酸が多いため分解されやすく水にも溶け反応性にも富んでいます。またアミノ酸の中でもセリンが最も多く含まれており、このセリンは肌の保湿にとても良いとされています。
 そしてさらに、人の肌のNMF(天然保湿因子)の中に含まれているアミノ酸の組成とセリシンを構成しているアミノ酸の組成とがとてもよく似ていることがわかっており、これにはとても驚かされます。

図.2にセリシンとフィブロインのアミノ酸組成、及びNMF中のアミノ酸の組成についてグラフで比較します。

 (注)NMFとは:肌の中の天然保湿因子(Natural Moisturizing Factor)のことで、40%はアミノ酸であり、その他にピロリドンカルボン酸、乳酸塩、尿素、ミネラルなどで構成されています。

図.2 構成アミノ酸の比較

 

<セリシンの有用性>

 セリシンの有用性について、改めて整理しておきます。
  1.  丹後ちりめんにおいては、糸を撚る際の撚り止め効果と、精練過程における約25%もの大きな重量減量に伴う風合い効果があります。
  2. 人の生理においては、構成するアミノ酸組成において極性アミノ酸が約77%と多く、かつ人の肌のNMF中のアミノ酸組成ともよく似ていることに伴う保湿効果と高分子量であることに伴う保護効果があります。
  3.   セリシンの利用分野については、上記②の性能に伴う化粧品等分野の事例が多くみられるが、今後はさらに医薬、医療、介護などの新たな分野においても開拓が期待されます。