THE SILK in Tango Kyoto Japan 丹後シルク

THE SILK > 丹後ちりめんとは

 丹後ちりめんとは、京都府・丹後地方で緯糸に強撚糸を使用して織られ、丹後で精練加工を経ることで生地表面にシボと呼ばれる凹凸が生まれる、後染め織物の総称です。厳しい検査を経た製品にブランドマークを押印し、高品質な「丹後ちりめん」として保証しています。

 本来、ちりめん(縮緬)とはタテ糸に無撚の生糸を使用し、ヨコ糸に強撚糸を用い、左右強撚糸を一本若しくは二本交互に打ち込んで織物とした後、精練により布面にシボを表した絹織物を指します。織物は化学繊維が開発されるまでは天然繊維が主な素材であり、中でも長繊維である生糸は強撚に適する特性を持ち、ちりめんの素材として最適でした。しかし、その後繊維技術の発展により化学繊維・合成繊維の開発が進み、丹後においても独自の技法が開発され、生糸以外の繊維でもちりめん本来の風合いに近い織物が作られるようになりました。
 丹後地方は、総合産地化推進への経過の中で、強撚糸等のちりめん技法を使用し、丹後で製織・精練加工された織物を総称して丹後ちりめんと呼ぶようになりました。

世界最高水準の表情を生み出す
「撚糸×織り」

 撚った糸=撚糸を使って織物を織ることは、 非常に難しい技術です。経糸の張力、緯糸を打ち込む回転数の調整など、経験によってしか得られない複雑な感覚が求められるためです。しかし丹後ちりめんの職人は永きに渡る技術の蓄積により、呼吸をするがごとく撚糸を自在に操り、世界的に見ても希少な表情を持つ生地を織り続けてきました。
 その表情の本質は、生地が3次元の奥行きを持つということ。糸が縮む力を利用して生み出す独特の凹凸「シボ」は、本来平面的である織物に立体感を与えます。撚糸一つをとっても糸の合わせ方や撚り回数など、組み合わせにより数え切れないほどの種類の緯糸が存在します。職人たちは組織の違いなどをかけ合わせることによって、生地表面に様々な表情を作り出してきました。

撚糸とは

丹後ちりめんの歴史は、生地の表情〈テクスチャー〉の歴史

 丹後は1300年以上前から絹織物の産地であった歴史をもちます。
 江戸時代に京都西陣で「お召ちりめん」が誕生した後、丹後の織物は「田舎絹」と呼ばれ、売れ行きが低迷。農業の凶作と重なり、人々の生活は極めて困窮しました。その危機を乗り越えようと京都西陣に赴き、ちりめん織りの技術を持ち帰った数名の先人たちがいました。帰郷後、 独特の「シボ(生地の凹凸)」を持ったちりめんの生産に成功し、これが丹後ちりめんの始まりとなったのです。彼らはその技術を人々に惜しみなく教え、 瞬く間に丹後一円に広まりました。
 丹後の職人たちは300年の間、各時代の和装シーンにいくつもの主流商品を生み出してきました。生地が透けて見える組ちりめん、色糸・金銀糸などを織り込む縫取ちりめん、上品な光沢を放つ緞子ちりめんなど、撚糸と織り技術の応用によって様々な「表情〈テクスチャー〉」の素材が誕生しました。その結果、戦前から丹後は日本一の絹織物生産地となり、今やそのシェアは全国の約70 %にも上ります。そしてその挑戦は、今もなお続いています。

丹後ちりめんと自然との関わり

 丹後の代表的な湿式八丁撚糸機は、水に溶けやすいセリシンの特徴を生かして、水を生糸に垂らしながら撚糸が行われます。また、シボを作り出す精練でも大量の水が使用されます。これらに使用する水は、丹後地方に降る雨、雪がもたらすものです。
 また、生糸にとって最大の敵は乾燥。乾燥した生糸は製織時、糸切れなどの原因となるのです。丹後地方の「うらにし」と呼ばれる気候が適度な湿気をもたらし、絹織物の生産に適した環境を作り出しています。

水とシルク