丹後シルクAbout Tango Silk
しなやかさと、多様な質感。
シルク生地の産地として、
1300年以上の歴史を重ねる中で磨かれてきたのは、
常に新しい生地の「表情」を生み出すための技術です。
京都・丹後地方の軟水によって生み出される、しなやかな風合いと、
あらゆる試行錯誤によって編み出された技法により、
丹後シルクは、多様な質感を全国へ、世界へ届けています。
最新の機械でも織れない
天然繊維であるシルクの糸は「生き物」であり、同じ作業を繰り返したとしても、結果は異なるもの。多様な糸を組み合わせ、撚り、織るという、シンプルなようで複雑な工程の中で、丹後の職人は日々「生き物」と向き合い、目的の質感・風合いを形にしています。それは最新の機械でも織ることのできない、美しく自然な表情。この表情のバリエーションの多さと、上質な質感が丹後シルクの特徴です。
世界でも類を見ない風合い
丹後は日本一のシルク織物生産地であり、そのシェア※は全国の約70%※にも上ります。丹後の織り手は、難解な要望を受けても「なんとか形にしよう」とする粘り強さで、永きに渡りシルク織物の世界を支えてきました。和装生地という厳しい品質基準の中で。世界への展開という挑戦の中で。新たな技法を生み出し、創意工夫を繰り返した結果、世界でも類を見ない風合いを持つ生地へと進化しています。
※日本で生産される和装用後染織物(表地)の数量、(一社)日本絹人繊織物工業会の資料に基づき試算
製織
湿式八丁撚糸機
目視検査
「産地」の条件を満たした場所
- 撚り
- 織り
- 練り
シルク織物における一流のものづくりは、撚り・織り・練りの3つが揃って初めて実現できます。撚り=糸を組み合わせて撚る、織り=経糸と緯糸を組み合わせて織る、練る=精練によりシルクの不純物を取り除く。この3つがあって初めて、「産地」と呼べる。
丹後地域は1300年前から絹織物が盛んな地域でした。その背景には、シルク織物に適した環境がありました。豊富で良質な水に恵まれ、年間を通じて適度な湿度になる気候により、乾燥に弱いシルクは傷みから守られてきました。水と気候、積み重ねた人の技術。すべてが1つの場所に集結した結果、丹後は「撚り・織り・練り」のすべての工程を満たせる地域として成長してきたのです。
あらゆる要求に応える「産地内一貫生産」
丹後地方は糸の選定、糸を撚る工程から、織り、精練、染色、整理加工に至るまで、生地製造におけるすべての工程を1つの産地で実現できます。
この一貫生産体制が、多様な生地を生み出す上での品質コントロールに繋がっています。
※織物の種類や仕上げ方法により工程は様々に変わります。
丹後シルクの独自性Individuality of Tango Silk
多様な質感と陰影を生み出す
産地内での工程コントロール
繊細で上質感のある質感と陰影。多様な質感は、産地内で完結できる各工程のコントロールから生まれます。丹後の織り手は、シルクを軸にあらゆる糸の選別、撚り方、織り方、精練法など、無限の組み合わせから目的の質感を得る経験と技術を有しています。
良質な軟水由来の
手触りと風合いのしなやかさ
人肌を思わせるしなやかで柔らかな手触り。丹後地域を流れる良質な軟水が、シルクの風合いを引き出します。溶けてしまいそうなほどソフトな手触りから、ハードな風合いまで、その風合いは多様。ストレッチ性・弾力感・ドレープ性・シワ回復性など、用途に合わせて自在にコントロールできます。
撚糸とジャカードによる
多様な織柄の表現
300年以上に渡る撚糸技術と、高密度な織り、そしてジャカードによる組織・構造テクスチャーを組み合わせることにより、1色の糸だけでも様々な「織り柄」を表現できます。単色による濃淡、白い生地でも強弱をつけられる繊細さは、プリントでは表現しきれない立体感と質感を生み出します。
パリコレ出品作品での丹後シルク採用
世界へ。
2005年から海外展開に挑戦する丹後の精鋭たち。その成果は、世界的なブランドが丹後の生地を活用する形で現れています。300年続く丹後ちりめんの伝統を活かしつつも、新しい技法やデザインを取り入れたブランド「TANGO OPEN」を立ち上げ、和装にとどまらない、ライフスタイル全域への商品開発にも挑戦を続けています。この多様性の時代にも、世界に通用する技術として、今もなお進化を続けています。
主な事例
- フランスのファッションショー「パリ・コレクション」での複数回採用
- 世界最高峰のインテリア・デザイン関連見本市「メゾン・エ・オブジェ」出展
- ハリウッド映画「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」の衣裳採用
- デンマークの音響ブランド「バング&オルフセン」Beosound2 Raden採用
- ニューヨークのファッションショー「ニューヨーク・コレクション」HIROMI ASAIコレクション採用
- 国内ホテル寝具等採用、百貨店フロアガイド採用
ほか多数
人の肌に最も近い天然素材。
〜今、見直されるシルク〜
この地球上に存在する天然繊維の中で、人間の肌に最も近い「シルク」。人間の肌が持つ20種類のアミノ酸のうち、18種類がシルクと一致することを考えても、人間にとって親和性が高い素材であることが伺えます。このため衣類やインテリア・寝具類への利用はもちろん、化粧品や医療分野に至るまで、今シルクは新たな可能性を見直されています。丹後織物工業組合においても、シルクセリシンの保湿成分を活用したスキンケア化粧品「きぬもよふ」を開発。丹後の織り手は肌に優しいシルクマスクの製造に取り組むなど、活用の幅を広げています。